男の痰壺

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シビル・ウォー アメリカ最後の日

★★★★ 2024年10月9日(水) 大阪ステーションシティシネマ

分断が加速して内戦に至る。そういったポリティカルな経緯は完全削除されていて、渦中から映画は始まる。それでも、想定されてるのはトランプみたいな分断を煽る為政者の政権に対してリベラル勢力が蜂起したってことなんでしょね。カリフォルニア・テキサス連合ってなってますが、カリフォルニアはともかくテキサスなんてバリバリ共和党のイメージなんですけど、まあそんな簡単に色分けできるもんでもないんでしょう。

 

NYからワシントンDCを目指して北上する記者とカメラマン一行4人のロードムービーの体裁を採っていて、彼らが途上で遭遇する出来事が映画の芯を成している。「地獄の黙示録」みたいなもんで、そのエピソードが内戦のど真ん中ではなく、傍のところで戦時下の狂気が蔓延する様を描いて秀逸だと思う。「死」というものの重みがうんと軽くなる世界では、同様に「人を殺す」ことの垣根もうんと低くなる。何十人も殺せばあと1人や2人殺したって一緒。赤メガネのエピソードは話し合いなんて最早なんの効力もないことを表しています。

 

自国の領土が戦場になる。アメリカが南北戦争以来一度も経験していない状況をシュミレートしてアメリカ人にとっては衝撃だったんじゃないか。そこが肝であり分断の是非をとやかく言う前にドカンと戦争とはこういうもんだと呈示してみせたわけです。

 

東京が直下型地震で壊滅してガバナンス機能が失われた日本に南から中国、北からロシアが侵攻してきて日本が戦場になる。そんなときに「戦争反対」のシュプレヒコールなんて何の役にも立たないことをこの映画は考えさせてくれます。