男の痰壺

映画の感想中心です

パターソン

★★★★★ 2017年8月29日(火) シネリーブル梅田3
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初期のモノクロの2作はめっちゃ好きだったのだが、その後「ミステリー・トレイン」「ナイト・オン・ザ・プラネット」と観てジャームッシュはカラーになって今一性に合わなくなったと思っていた。
ずーっと観てなかったのだが、数年前に「リミッツ・オブ・コントロール」を、もしやと思って観たが、やっぱ性に合わんというか、このおっさん何処向いていきよんねんなという感じでよいよあかんわと思ったのであった。
 
で、「パターソン」なのだが…これほんまによろしいなあ。
好っきやわあ。
 
反復を始め豊潤といっていいギミックが悉く効いてるのだが、本質は時代に迎合しない覚悟なのだと思う。
主人公は、車社会のアメリカに居ながら、勤務先のバス会社まで毎日歩いていきます。
日々移ろう空気を感じ、同じようで同じでない景観を眺め、行き交う人と言葉を交わす。
どいつもこいつも俯いて液晶の中にしかアイデンティティを見いだせなくなってしまった時代へのジャームッシュなりのアンチテーゼなのでしょう。
 
俺もこうありたい!と思い観終わって即スマホをドブに投げ捨ててやった。
ふっふっふ…そんな夢を見ました。
 
反復の快楽リズムが行き届く世界で豊潤なギミックが悉く効き粋そのものだが、本質は時代に迎合しないということ。日々移ろう空気や光や行き交う人々を総体として心から愛でる能動意思。虚構世界の中にしかアイデンティティを見出だせぬ時代へのアンチテーゼ。(cinemascape)