★★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX
敵対する2つの村があって、深い渓谷が互いの行き来を阻んでおりました。双方の村の男の子と女の子が渓谷越しに互いに興味を持ち、興味は好意に、好意は恋心へと。
とまあ「ロミオとジュリエット」みたいなもんです。であるから、物語の強度は申し分ない代わりに今更感もある。
岡本忠成は確信的にベタを押し通す。その為にベタを2重3重に上塗りしてみせる。1つは民芸フォーク調の劇伴であり、もう1つは木製の人形のプレーンなフォルムです。
奇を衒うところ皆無の下ぶくれの顔した主人公オリツが、いつしか得も言われない美人に見えてくる。シンプルイズベストの理であろう。
これは、そういった強固な確信がもたらした幸福な達成だと思わされるのです。
木製人形の瓜実顔の余りにプレーンなフォルムと民芸フォーク調の余りにベタな劇伴が今更の和製ロミジュリ物語を反転させ類い稀な強固な世界を現出させる。上塗りされた2重3重のベタが形成する岡本忠成の到達点。架橋作業のテクニカルな造形も見せ場。(cinemascape)