★★★ 2019年11月30日(土) テアトル梅田1
若い女性監督が、女性が虐げられていた時代を描く。
ってのが、そもそもに胡散臭いのであって、なぜなら今現在の作家の内実からほとばしる魂の叫びってのが物語を希求したものではないように思えるのである。
富裕階級が何人もの女性を妻にしていた時代で、主人公は3番目の夫人として14歳で嫁ぐ。
3番目の妻だから、先輩格が2人いるわけで、当然に女3人の確執があるんやろなと思っていたのだが、あんまりありません。けっこう2人とも優しい。
でも、優しいんじゃドラマになりにくい。
彼女らは妻って感じじゃない。一家を仕切って家庭をきりもりするような主婦ではないし、夫といろいろ談笑したり悩みを相談したりするわけでもない。
順番に呼ばれて、夜のお相手をするだけです。
いわば、子作りマシーンなのであって、男子を産むことが至上命令なのであった。
でも、女子ばっか産んでる第2夫人も、そんなに肩身が狭そうにも見えない。
むしろ、第1夫人の息子と関係しちゃったり、けっこうやりたいほうだいやってる。
主人公である14歳の女の子は、彼女をけっこう慕っていて、そこに現況に対する仄かな反意の芽生えを映画は示唆しようとしたいみたいだが、そういう感情の発露を直裁に描かないので、どうにも煮え切らない。
まあ、女性が声高に意思表示できるような時代でもなかったし、まだ子供なので仕方ないんでしょうが。
この映画で、もっとも劇的なのは、長男の嫁として嫁いできた女の子が長男から一指も触れられず悲惨な末路を迎える件だ。
それに拮抗するようなドラマが主人公の女の子にないのがどうにも弱い。
幼くして嫁に出された少女の自我は大して芽生えない。彼女の周りで第一夫人の不妊や第二夫人の不倫など見聞きする世界は周っている。しかし、彼女は主体的に何かをしようとはせずこれではドラマは生じない。触れられずの少女が死んだが世界は何も変わらない。(cinemascape)