男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2003年8月19日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

フィリピーナ

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※本文には船戸与一著「虹の谷の五月」のネタバレがあります。

船戸与一直木賞受賞作「虹の谷の五月」のラスト。
フィリピンはセブ島の辺境の村で生まれ育った汚れを知らぬ聖少女メグが享楽の暗黒都市「ヨコハマ」に行くことを示唆して終わる。
読後、しばし本を伏せ、俺は過去の思いにふけった。
突如、脳裏に飛来した1人の女性の記憶…
…その名はマリルちゃん。


10数年前、関西はとある辺境の都市でサラリーマンだった俺は(今もそうだが)入社3年目の初な青年であった。ある日、転勤で1人の先輩が赴任してきた。目付きの気持ち悪い先輩であった。先輩は既婚者であったが瞬く間に夜の町を掌握して1人のフィリピンのママさんを囲ったのだ。その女性はその町に当時流入が加速していたフィリピン人ホステスの世話役みたいなのをしてたらしい。日本人と結婚しているが亭主は刑務所にいるとのことであった。俺や後輩たちは何度もそのママの店に連れて行かれたが、正直、腰は引けていただろう。「ヤバいこと関わりたくないなあ、かなわんわ」というのが偽らざる気持ちであった。
先輩は、よく仕事中も俺たちに声をかけて来た。
「お前ら彼女もおらんで、あっちはどうしてるん?…グフッグフッグフッ…」
不気味な含み笑いであった。
そして、ある日、晩にあるパブに行くように指示されたのだ。で、店がひけるまで粘って残ってろと言う。
「悪いようにはせんから、なっ…グフッグフッグフッ…」
俺と後輩Aの2人は仕方なくその店に行った。そして…。
(続く)