男の痰壺

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ポーラX

★★★★★  2026年3月11日(水) テアトル梅田2

劇場映画鑑賞記】【映画短評】「ポーラX / Pola X」(1999)|edge5s

昔「汚れた血」や「ポンヌフの恋人」を見ていたく感動したのだが、それは物語に対してではなく映像の気障ギリのフォルムや演者の臨界スレスレの入れ込みに対してであったのだと思う。なので今見たらどうやろとの懸念もあった。だけどカラックスの長篇で唯一見逃していた本作を今回見て、やっぱスゲーわと思いました。その覚悟の程に。そして昔何に感動したのかも蘇った。

 

序盤は退屈で眠気を覚えたのだが、それは物語が起動する為の前振りであった。ブルジョワボンボンの凡な日常は、森で出逢った1人の女性によって一転する。その妖気とも言える負のオーラを纏いブツクサと彼女の語るモノローグで押し切る、或いは押し切れるとしたカラックスの賭けとも言える確信。

男は全てを捨てて彼女とともに街へ出る。メフィストテレスに誘われるように異能者が巣食う廃工場へ。こいつら何者で何やってるのかさっぱりわからんのだけど、彼らの演奏するサウンドだけはド本気の本物臭がする。この本物臭とド本気こそが設定の稚戲を吹き飛ばし物語を昇華させるのだ。「汚れた血」や「ポンヌフ」もそうであったよな、と今更思い出す。

 

暗色に塗された2人の接合が、オーラルセックスのみによって表現されるのも物哀しい。近親相姦の禁忌が回避されたとしても、それは儚い夢にしか過ぎない。どっちにしても行き止まりの愛はなるようにしかならぬ破綻に向かって突き進む。終局の悲劇3段重ねとも言えるつるべ打ちによりギリシャ悲劇めいた崇高さで映画は幕引きを迎える。

 

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