男の痰壺

映画の感想中心です

映画2000

天国までの百マイル

★★★★ 2001年4月6日(金) パルシネマしんこうえん 巧妙な換骨奪胎であると同時にベタ泣かせの商業的陥穽には田中陽造だから落ちるようなことはない。何の個性も主張しない演出だがプロットの把握の仕方は的確。しかし、名手田村をもってしても、この貧弱ライテ…

13デイズ

★★★ 2001年5月8日(火) 祇園会館 好戦ポピュリズムに抗して理を通す困難と孤独を余すことなく描いているが、側近で助言者である語り部と弟、この3者間の信頼と共振が仄暖かく救われる。しかし、室内ディベート劇に徹し切れないパイロットエピソードの挿入な…

三文役者

★★★ 2001年5月30日(水) ホクテンザ2 それなりに巧妙な竹中の泰司芸ではあるが素でシンクロしたと思わせる瞬間が確かにあったように思える。波乱万丈とまではいかぬ泰ちゃん人生にセットやメイクに拘泥せぬ緩い新藤イズムで対し自身の作品中心の展開でも手前…

ギフト

★★★ 2001年6月18日(月) 梅田ピカデリー3 『シンプル・プラン』にも通底する弱者への慈しみが基調にあり、ケイトの静謐なる佇まいと相まって哀しみに溢れた情感が全篇を覆う。それだけに、オカルティズムはドラマの根幹だとしても、そこに収斂させる作劇では…

ファイナル・デスティネーション

★★★ 2001年8月24日(金) 新劇会館シネマ1 おっ開げた世界が矮小化しようとも、掴みが良ければ余熱で映画はもつ。殺戮ショーの品評会以上でも以下でもないのだが、定められた運命の不可逆性は世界観を押しつけられ蹂躙されるかのような居心地の悪さだ。個々の…

親分はイエス様

★★★ 2001年9月7日(金) テアトル梅田1 極道時代を描いた部分が適宜な役者の配置により過不足ない出来で温さを免れており、後半もそれなりには感動的。まあ、何を思い何するかは人それぞれなのだが、肝心の何故クリスチャンに?…という部分は皆目わからずじま…

現実の続き 夢の終わり

★★ 2001年9月20日(木) ホクテンザ2 水野美紀の復讐アクションに特化して欲しかったのだが、何故か台湾マフィアの内輪揉めの話が延々と繰り返されるのでイライラしてくる。台湾人監督の描きたいことは我々日本の観客の要求に応じ切れていない。展開はルーテ…

焼け石に水

★★★ 2001年9月20日(木) 扇町ミュージアムスクエア 図太いおっさんが勝ち残ってしまうのが人生ってそんなもんという諦念につながる一篇なのだが3者3様に靡いて蔑ろにされるというM連鎖が感情寄せる部分も無いままヘタレダンスで一体化というキッチュ。結局…

ターン

★★★ 2001年12月6日(木) 動物園前シネフェスタ4 手塚治虫の掌話みたいなテイストなのに無人の幹線道路なんかをヘタに見せたりするから見る者は大構えな何かを期待してしまう。ミニマム世界に徹して吉の企画だった。抑制が効いた描き方は焦燥と諦観、希望と絶…

殺人ドットコム

★★★ 2002年1月13日(月) 天六ユウラク座 ネタが割れそうになると先回りして割っちまう展開が巧いかズルイかはともかく、好テンポを産んで飽きさせない手法とは思う。だが一方で、枝葉を広げすぎて焦点がボケた感も否めない。まあしかし、拾い物とまでは言わず…

フェリックスとローラ

★★★ 2002年1月17日(木) 梅田ガーデンシネマ1 世の倫理の外にもある愛を描いてきたルコントだが、流石にこの自己愛女を描くに正面突破は難儀したのか薄幸を装わせ仕掛けを引っ張る搦め手戦法。だがそれは男の無償の純愛を後方に霞ませてしまう。イライラ感が…

まぶだち

★★★★★ 2002年2月26日(火) 扇町ミュージアムスクエア ジャンルの定型に沿ってはいるが、それでもオリジナルだと思った。台詞は生硬で饒舌過ぎるにせよ主人公の少年と担任の教師がそれぞれの価値観で世界に正対してモノを言ってるからであろう。子供たちのキャ…

Dr.Tと女たち

★★★★★ 2002年3月6日(水) ナビオシネ5 伝統的スクリューボールを基底とした女だらけで化粧の匂いが充満するかのような濃厚な前半も、フェリーニが匂う終盤を経ての達観したかの如きラストも良いが、仕事も家庭もどうでもいいぜ、悩みなんかぶっ飛ばせとばか…

おいしい生活

★★★★ 2002年3月14日(木) 西灘劇場 語り口の抽斗を山ほど持つ男が「芸」を見せきる為に抑制を選択したのが心憎い。この2人の夫婦役者の掛け合いは何時間見てても飽きないだろう。至芸と言っていい。川下から拾い上げたウルマンやメイ。役者の選択が全てと言…

ガンシャイ

★★★★ 2002年3月24日(日)~25日(月) 天六ユウラク座 正直余り巧い演出とは思わないが変な映画であることは確か。大体おならとか腹下しとか幼児的な下ネタにこれほど拘るハリウッド映画って見たことないよ。伏線の無い強引なラストにも何故か腹立たない。人生…

フォー・ザ・バーズ

★★★★ 2002年4月1日(月) 梅田ピカデリー3 電線の鳥達が交わす悪意に満ちたさえずりのリアルとデフォルメされた彼等の真ん丸の姿形とのアンビバレントな調和。正にピクサーの力業とでも言うべき領域だが、集団と個の対立という米カートゥーンに古来より用いら…

プライベートレッスン 青い体験

★★★★ 2002年4月28日(日)~29日(月) ホクテンザ2 省略ではなく安易で強引な展開がポルノだから仕方ないかと諦める前半をクリアすると予想外に真摯な脱トラウマ劇としての煌めきのようなものが浮かんで来て最後は感銘を覚えた。しかもポルノとして最高にそそ…

鬼が来た!

★★★ 2002年5月15日(水) シネヌーヴォ 戦時下の混乱のなかで右か左かを明確にできる訳ないのかもしれないが、こうも未整理に成り行き任せの丸投げを見せられても理に落ちるところがない。初期設定の帳尻を合わせ切られず混沌に逃げたようにも感じる。ラストも…

リトル・ダンサー

★★ 2002年5月11日(土) 西灘劇場 この少年がバレエの何に心を捉えられ、この親爺は息子の学芸会ダンスのどこに才能を見出したってのか?この映画には設定だけがあってそれを真実に見せる内実も術も全く無い。ストの描写も表層的で陳腐だし佳境の面接に至って…

SPY_N

★★★ 2002年7月29日(月)~30日(火) ホクテンザ1 2枚目半が似合いそうな紀香にマタハリ的絶世の美女スパイを演らせたのが座りが悪く、本人もしんどそう。主人公と女スパイの軸に1元化してくれないからクライマックスへ収斂していくカタルシスが無い。とは言…

タイガーランド

★★★★ 2003年4月18日(金) トビタシネマ 3人の主軸が『プラトーン』と同じ構図のインテリ坊やの「擬似」戦争体験記ときては鼻白むが、脱落者の描写が演者の巧さもあり特筆的に冴え、何よりシュマッカーのドグマ演出が堂に入ってるのに驚嘆。題材にこの上なく…

風花

★★★★ 2021年12月5日(日) シネヌーヴォ 文部省の高級官僚とピンサロ嬢という社会的ヒエラルキーの両極の2人が、ひょんなことから2人旅。って言うと仕掛けが見え見えな気もするのだが、実は大して仕掛けは機能しない。 だいたい、浅野は高級官僚に見えない…

オー!スジョン

★★★★★ 2021年9月20日(月) シネヌーヴォ 反復のエクリチュール。 同じ物語を見方を変えて2度繰り返す。ホン・サンス近年の「正しい日 間違えた日」でも使われた叙法である。 男から見たものの見方と女から見たそれは違う。男は簡単には楽観的になれないし…