男の痰壺

映画の感想中心です

ビジランテ

★★★★ 2017年12月9日(土) テアトル梅田1
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まず、こういう骨太題材をオリジナル脚本から構築した入江監督を頼もしく思う。
日本映画で久しくなかったジャンルだし力作レベルだと思う。
 
しかし、やはりというか、ちょっとどうかと思う点もチラホラ。
 
【以下ネタバレです】
・土地と開発を巡る利権という使い古されたテーマである点。
・地方議員である次男の嫁が苦境に立った亭主のために実力者に体を提供といのは余りに前時代的。
・長男が展開のキーを握っているはずなのに、終盤でまったく機能しない。
・自警団や中国人居住区が描かれるが、本筋と乖離したまま。
 
一方で、秀逸な点は。
・三男のやってるデリヘルの女の子たちを含めた環境描写。
・政治家と結託した暴力組織の実働部隊のリアリティ。
・長男の負債をめぐる貸金業者の描写。
 
結局、この映画の白眉は暴力団貸金業者の鉢合わせシーンであって、それが、土着性を帯びている点で最近の北野映画のそれより新味がある。
これが、兄弟の確執や先述した自警団や中国人と絡み合っての三つ巴・四つ巴の展開になてくれれば大傑作たりえたかもしれない。
 
地方都市を舞台にしたノワールがやりたかったらしい。
本年公開の韓国映画「アシュラ」あたりに及ばないと思われるのは、それが加速的に収斂する作劇のダイナミズムに欠けていたからだ。
惜しい作だと思う。
 
3兄弟物語としての落とし前が無いことに据わり悪さを感じるし、開発と利権マターは多分にステロタイプ。だが圧倒的なのが郊外都市の閉塞感で、そこにエロと暴力と豚の臭いがギュウ詰めされ混沌を呈する。佳境のヤクザと貸金屋の鉢合わせは真にオリジナルだ。(cinemascape)