男の痰壺

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斬、

★★★★ 2018年12月13日(木) シネリーブル梅田1
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冒頭、刀を鍛造する過程がフェティッシュに描かれ、出来上がった真剣の張りつめた擦過音が強調される。
そのメタリッシュなものへの偏愛が往時の塚本を期待させるのだが。
以後、真剣への偏愛が強調されることは無かった。
だが、それでも、これは、正調塚本映画だと思う。
 
池松演じる主人公は腕が立つ。
乱世に決起を目論む塚本の剣豪の使い手探しにも眼鏡にかなう。
身を寄せる農家の娘、蒼井優にも好かれてるみたい。
だが、こいつはてんでダメ野郎なのであった。
 
気がある女に心根を言えずに、彼女を盗み見してセンズリこきまくる。
暴虐を尽くす野盗集団に乗り込んでも、相手を斬れない。
要は、人を斬ったことがないのである。
そういった、男が覚醒するってのは「鉄男」や「東京フィスト」といった初期作品のテーゼだった。
 
まあ、例によって手持ちのブレや不要なカット割りなどイラつく。
終盤に何故あれほど露光を落とした?
とか思うのだが、一方で殺陣の切れ味が擬音効果と相まって秀でている。
 
ダメさの表現としてセンズリ野郎であったという嬉しいくらいの塚本節で、そういった男が覚醒する初期作を踏襲する流れなのだが、良いところは自分が全部持っていく為に覚醒も消化不良。ただ真剣のソリッドを擬音で表現し殺陣の剣呑さが迸る。そこは本気。(cinemascape)