男の痰壺

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ブラック アンド ブルー

★★★★ 2020年7月26日(日) MOVIXあまがさき3

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冒頭、ジョギング中の黒人女性が、パトカーに止められいきなり羽交い締めにされる。

今年の5月に起こったジョージ・フロイド事件を連想させるのだが、この映画は2018年の作で事件を直に反映したものではない。こういうことは日常茶飯事だったということだ。

 

結局、彼女は新人の警官なのであった。

その後、映画は構造的な人種問題に切り込むことはない。だが、だからといってこの映画が駄目とは思わない。

思わないが、腐敗した警官VS新人警官の図式に目新しさもないのだ。「レ・ミゼラブル」とか「トレーニング・デイ」とか。

 

いったいどっちやねん。ってことなんですが、黒人のサークルからも日和ったヤツと敵視され、警察内部でもチクり野郎と見なされ、いわば四面楚歌状態に追い込まれる。従軍体験があるとはいえマッチョには遠い小柄な彼女が追い込まれ、それでも何とか反攻するさまには、やはり引き込まれます。

 

彼女に協力するのが、見てくれマッチョな黒人のドラッグストア店員。こいつが意気地なしなのもいい。巻き込まれてるうちに開き直ってくる過程も共感を呼ぶ。

 

撮影が久々のダンテ・スピノッティ

随所で空撮を混じえた怜悧なトーンはマイケル・マンとの仕事を彷彿とさせる。

 

出自のコミューンから犬と誹られ属する組織からチクリ女として排除されようとする。四面楚歌の絶体絶命という映画的常套だがコミューン内の浄化作用が危機を回避させる。3者入り乱れての混沌戦の帰結は正義の残滓が仄苦い。スピノッティの空撮がクール。(cinemascape)

 

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