男の痰壺

映画の感想中心です

21ブリッジ

★★★ 2021年8月8日(日) 新世界国際劇場

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犯人逮捕のためマンハッタン島に架かる21の橋を封鎖する。更に船舶、地下鉄も封鎖だーと派手にアドバルーン飛ばしてくれてますが、タイトルと宣伝サギです。想像されるようなパノラミックかつダイナミックな舞台設定はありません。ていうか橋なんて最初のタイトルパック以外ぜんぜん出てこんやんけ!アホンダラー。

 

チャドウィック・ボーズマンが末期ガンをおして出演して遺作となった。その事実には厳粛な思いを抱かざるを得ませんし、そう言われればやつれて見える彼に肩入れもしたくなるんですけど、やっぱ優作in「ブラック・レイン」みたいな棺桶に片足突っ込んだ死出の凄みとまではいかない。というか、ああいうルサンチマンをスクリーンに刻印するむためにはJ・K・シモンズの役をこそチャドウィックに充てるべきだった。

 

【以下ネタバレです】

ジョージ・フロイド事件とか見るたびに思うのだが、そりゃ人種差別に根ざした暴力は断固許されるもんじゃない。

だが、クロかシロかわからない相手に対峙して、ひとつ間違えれば自分が撃たれて死ぬみたいな状況に日常的に晒されている警官のストレスってどうなんやろか。しかも薄給で。シモンズが言う。俺たちにも妻や子どもがいるんだ。

 

警察の内部腐敗を描いた映画は後を絶たないが、多くはそれでも警官たるもの正義の規範を守るべしで終わる。

でも、もうそれもそろそろ限界じゃないかと思うんです。

 

封鎖されたマンハッタンという設定は活かされず、内部監査食らうチャドの殺しすぎの背景も有耶無耶で万事が振ってみただけ。となれば唯一の真実はJ・K・シモンズの言い分にある気さえしてくる。その報われぬ死屍たちに拮抗し得る正義の不確かさ。(cinemascape)

 

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