男の痰壺

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TITANE チタン

★★★ 2022年4月11日(月) 梅田ブルク7シアター4

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ジュリア・デュクルノーの前作「RAW」はかなり好きだったのですが、本作はここまで壊れてしまうと如何なもんかと思いました。ニコラス・ウィンディング・レフンが「オンリー・ゴッド」で半壊の旨味を醸した後に「ネオン・デーモン」で全壊したのを思い出した。よく言うじゃないですか、腐りかけが一番美味しいって。完全に腐ったらなかなか食えたもんじゃないんです。

 

【以下ネタバレです】

幼少期から自動車好きで、事故で頭に金属プレート埋め込まれて、その影響かどうか知らんが自動車と交接するようになった女性って設定はいい。がしかし、この車への偏愛に一応触れてるのは序盤だけで、以降この設定は物語から放逐されてしまう。

で、代わりにシリアルキラーになったていうのだが、どうもなあ、そうするのやったら幼少期の話はない方がいいのではと思う。どうしたってそこに因果律を求めてしまうから。求めると結びつかないのがもどかしく、なんだか思いついた奇矯な設定を並置しただけに思える。

 

映画は中盤以降に新たな登場人物、私設消防団{?)の隊長というエクストリームにニッチな意匠に複雑な心理を擁する人物を投入してきて、主人公の中空に浮いていた自我は曲がりなりにも着地する。引っ掛かりを求めて揺蕩う俺のモヤモヤも足場を得たようだ、一応は。でも、だから?って思うのでした。

 

個別のシーンの造形はさすがと思わせる。冒頭のモーターショーの喧騒の中を縫うカメラの長回し、レズ相手の女性宅での殺戮の凄惨とユーモア、消防団での飲み会での越境するダンスの痛ましさなどなど。

 

「RAW」もそうだったが、女性にしか描けない生な生理を前面に出してくる部分が男である俺からすれば怖い。本作では主人公と隊長の妻との対峙シーンで、男には絶対描けないと思われる。

 

金属との融合願望が寄って来る人間の殺戮衝動に結びつく謂れも喪失を抱えた親爺の心の空隙に安堵を覚える道理も解らない理解不能の3段構えだが描写のコクと本気汁がハンパなくて見入る。相貌や体型に加えた変形を押し破り見破られる女の性への詠嘆的共感。(cinemascape)

 

 

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