男の痰壺

映画の感想中心です

遺灰は語る

★★ 2023年6月28日(水) シネリーブル梅田3

「グッドモーニング・パピロン!」を昔見たときどうしようもなくペラペラに思えて、それ以降タヴィアーニ兄弟の映画は見てません。兄ヴィットリオが数年前に亡くなって、これは弟パオロ単独での作品なんだそうだが、彼も御歳90、年寄りの冷や水というしかない出来だと思いました。

 

第二次大戦後に、ピランデッロというノーベル賞作家(全く知りませんでした)の遺灰をローマから彼の故郷シチリアに移送する話で、この間に2つ3つエピソードがあるんだが、その移送をする役人だかなんだかの人に映画はほとんど寄り添わないので、感情の寄せ場はナッシングだ。もちろん遺灰も何も語らない。ていうか遺灰は全く映らない。

 

ピランデッロの想い、移送の役目を負った役人の思い。そういったものを描くことなく遺灰の話は1時間で終わる。尺がもたないから、ピランデッロの短篇を映像化して付け足してます。カミュの「異邦人」みたいな話は興味深いが、タヴィアーニの手に余った感じ。全然遡求してくるものはない。

 

作家の遺灰を大戦後に故郷まで移送したという史実自体の興味深さはタヴィアーニの想像・創造力不足により全く膨らまない。実弾のない鉄砲撃ってるようなもんでカチカチ空虚な音がするだけ。尺足らずから思いつきで足したみたいな短篇パートもつまんない。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com