男の痰壺

映画の感想中心です

うたかたの戀

★★★★ 2018年7月8日(日) プラネットスタジオプラスワン
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オーストリア皇太子の心中事件をモデルにした映画は本作品を含めて3作あるらしい。
まあ、悲恋ものであり、成さぬ恋の果ての情死という意味で「ロミオとジュリエット」みたい。
しかし、現代の感覚から見れば、何もそこまで思いつめんんでも…と思ってしまう。
心中やなくて駆け落ちでも…とか。
 
近松の心中ものをはじめ古来、文学的モチーフとして心中は人気グンバツなのであった。
雁字搦めのシステムが社会を遍く覆っていた時代ゆえである。
敷居は取り払われ制約が無効化する昨今は、ある意味文学受難の時代かも知れない。
 
アナトール・リトヴァクの映画は「追想」を見たことがある。
あれも、失踪したロシア皇女アナスタシアにホームレス女を仕立てあげる。
というハッタリ講談であったが、こういう大構えな物語が好みな監督らしい。
 
2つのシーンが圧倒的。
オペラ観劇と舞踏会だが、どちらも徹底的に2人の視線の交錯がこれでもかと描かれる。
大状況でのミニマムな心理のピックアップはちょっとデ・パルマチックで劇的だ。
 
何でそうなるのの疑義が敷居が崩れ制約が無効化する今の時代を逆照射するのだが、世紀のロイヤルスキャンダルのロマンティシズムが済し崩す。万感を込めた視線の交錯はオペラ観劇と宮中舞踏会という大状況下でデ・パルマチックにミニマムな心理を抽出。(cinemascape)