男の痰壺

映画の感想中心です

シスター 夏のわかれ道

★★★★ 12月5日(月) 大阪ステーションシティシネマ

両親が事故で死んで会ったことのない幼い弟を引き取ることになった20代の姉の話なのだが、演じるチャン・ツイフォンが童顔なので初めは学生かと思ってました。中盤以降で看護士として働くシーンが出てきて、そやったんかと思わされます。

とにかく強烈な自我をもった女性で、幼い弟のことを迷惑物としか見ない。親類からギャーギャー言われて已む無く引き取るが、もう嫌で嫌で堪らない。この人格形成がどうして為されたかが映画の一つの柱となっている。

 

【以下ネタバレです】

中国の1人っ子政策が背景にある。両親は男の子がどうしても欲しくて彼女に障がい者のふりをする生活を強いていた。そうすればもう1人産んでもいいみたいです。そんな生活に反発して彼女は家を出て親戚のところに転がり込んで世話になって育った。なので親が死んでもどうってことないし弟がいることも知らなく知っても決して弟のことを良くは思えない。

 

こういう事情は追々に描かれるので、最初はもうちっと弟に優しくしたれやと思います。

まあ、そんなんですが、やっぱ一緒に住んでて色々あるうちに情もうつってくる、という定番展開なので一安心、ってそうか?

 

看護士ではなく勉強して医師になりたい。それが彼女の絶対不動の生きる心の拠り所なのだが、弟の世話なんかしてたらそんな夢は遠のいてしまう。

そんな彼女を取り巻く人物群像が分厚い。家制度に縛られる恋人の医師を切り捨て、嘗てロシア留学を家の為に断念した叔母の述懐を聞き流し、弟は里親を見つけて放逐する。そうやって突き進む彼女だが、どこか惑いがあるみたい。

 

新進の女性監督による女性の自立をテーマにした映画だが、現代中国の様々な問題や多くの具体的なエピソードを交錯させることで、肩肘張った女権論的な生き方の提示を免れていると思いました。

 

親を見放し一本独鈷な生き方を志向する彼女を取り巻く親類・彼氏・職場などの描写が現在中国が抱える問題を多層的に炙り出す。全てをぶった斬る合理判断の前でも見知らなかった弟への思いは彼女を非合理に走らせるだろう。それも又人なのだという普遍的念い。(cinemascape)

 

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