男の痰壺

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墓泥棒と失われた女神

★★★★  2024年7月22日(月) テアトル梅田2

中盤で、それまでの小物の墓でなく、かなり立派な霊廟を発見する件があって、不用意に開けた洞窟から外気が侵入して、みるみる壁画が色褪せてしまうシーン。「フェリーニのローマ」で地下鉄工事の現場でのそれの縮小模倣に見えてしまい、あれっと思った。

 

アリーチェ・ロルヴァケルの作品について以前書いたものを読み返してみたら「夏をゆく人々」についてエリセ、タヴィアーニ、アンゲロプロス、アントニオーニの影響を、「幸福のラザロ」については、オルミ、パゾリーニのエッセンスを感じると書いていて、彼女自身、創作に際してのヒントとなったことを否定していない。ただ、それはあくまで自身の出自に基くオリジナルな風土性あればこそなのであって、よくあるシネフィル的な表層の模倣や無邪気なリスペクトではなかった筈なのだ。

 

ラストにしても、まあこれは偶然かもしれないが、ツァイ・ミンリャンの「Hole」を思わせる。こういった感想は瑣末なことかもしれない。しかし、やっぱ前2作に比して、安易に流れてなんだかなーとは思わせる。

 

遺跡を盗掘することの良し悪しと、行方がわからなくなった恋人への思い。この2つの主題がうまく噛み合わず乖離している。ロルヴァケルの映画にそういう常套のドラマトゥルギーを求める気もないのだが、ギミックの熟れ切れなさを見るにつけそっち方面への注力が今回は吉だったのではと思わせるのだ。

 

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