★★★★ 2018年6月7日(木) 梅田ブルク7シアター4
【ネタバレです】
金槌で殴って殺すってことで、陰惨でゴアなものを予想していたが皮膚感覚な残虐描写は無い。
それが、良いか悪いかは終盤で腑に落ちる。
母親を惨殺された主人公が2人の侵入者のうち1人を生かして捕らえる。
どんな拷問シーンが始まるかと思ったが…全くない。
寧ろ死に行くものを労わるように手を取る。
ホアキン・フェニックスの徒にマッチョにシェイブしたのではなくダルに中年太りしている肉体がいい。
荒んだ精神が宿っているようだ。
2つのトラウマが断片でフラッシュバックする。
少年時代の父親との確執。
中東への派兵時の少年にまつわる何か。
これらは、余りに断片でしか提示されないので、なんのことかさっぱりわかりません。
が、トラウマがあるってことがわかればいいような気もします。
失踪して幼児性愛者相手に売春させられてる少女を連れ戻す稼業。
認知が入った母親との2人暮らし。
そういった、日々に彼は疲弊しきっている。
呪縛から解き放たれるために銃を自らに向け引鉄を引く夢想。
少女は言った。
「行きましょう」
新しく美しい日が始まる。
幼児性愛者を撲殺する稼業の救い無さと病んだ母との生活の救われなさが過去のトラウマも混じえホアキン・フェニックスの贅肉に瘧のように沈殿する。その連鎖を自身で断ち切ることはできないが、暗殺者や拉致少女が頸木を解くだろう。仄かな希望が切ない。(cinemascape)