男の痰壺

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天命の城

★★★★ 2018年7月15日(日) 大阪ステーションシティシネマ
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敗戦に至る何日間かを描いてるのだが、意外なほど醒めた視線だ。
もっと情緒過多なのかと思ったが、分析的で怜悧。
わかっている結末に向けての単線構造を、ほぼ夾雑物無しで突き進む。
 
知略も戦略も大してない王がいる。
そこに取り入って覇権を伸ばそうとする愚臣が徹底的に描かれる。
現場感覚が欠如したうえに大局的な情勢の読みもできない。
 
和平派(イ・ビョンホン)と抗戦派(キム・ユンソク)の対立で映画はすすまない。
2人は考えは違うが馬鹿じゃないわけで、映画は彼らと馬鹿愚臣の対立に関心を寄せる。
 
冒頭の氷河の案内人を斬る件をはじめ魅力的なエピソードが満載。
清側の通訳をつとめる朝鮮族の男をはじめ深みのあるキャラクターも豊富。
 
ただ、近衛兵師団のエピソードが佳境なのだが、そこが如何にも短尺で食い足りない。
 
敗戦記として揺らがぬ強度もあるが世界が見えない愚臣どもの妄言は現在を顧みるに能う。対して手仕舞いの方途は違えど判ってる2人の身の処し方の清冽。渡河案内人の顛末や清国通詞の怨嗟などエピソードとキャラが豊饒で奥深い。ただ近衛師団の挿話が尺不足。(cinemascape)