男の痰壺

映画の感想中心です

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

★★ 2023年8月24日(木) Tジョイ梅田4

ここ1、2年クローネンバーグの旧作を多少見てたので意識してなかったが、これは新作としては「マップ・トゥ・ザ・スターズ」以来のもので、あゝクローネンバーグ終わったなの感触を再確認するものでしかなかった。

当人にしか理解の及ばない世界を実しやかに構築してハッタリをかますという意味で「クラッシュ」劣化版でしかない。「実しやかに」ってのに本気度が足りないと思いました。

 

一応には現実事象である交通事故に材をとった「クラッシュ」に対して、ここではより普遍から遠い人体解剖が取り上げられて、それ見ることが三度の飯より好きな連中のコミューンが描かれる。しかも単に解剖するだけでなく、その検体の中では何らかの変異で新たな臓器が形成されてることが必須だと言う。もはや全く意味不明なのだが、その意味不明を押し通すフェティズムが欠けている、と思いました。なんか臓器も安っぽくて禍々しさがない。クローネンバーグの審美基準の衰退を感じました。

 

ヴィゴ・モーテンセンの予想外の老化もだが、前作ワシコウスカを継承するクローネンバーグ嗜好の爬虫類系女優の本命レア・セドゥがほとんど冴えないことも残念だった。

 

実しやかなハッタリは現実事象との接点があることで実しやかであるのにクローネンバーグの脳内で閉じた物語はプラスティックな与太話にしかならないし臓物もビニールめいてフェティズムの欠片もない。これでは劣化版『クラッシュ』の域を出るものでない。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com