男の痰壺

映画の感想中心です

ナベシンのこと

九条の商店街を駅から歩いてきて脇に折れ少し歩いたところにシネヌーヴォという映画館がある。
俺は期待と不安を胸に歩いていく。
渡辺シン監督の「水面のあかり」という映画を観るために…。

もう、30数年以上前のことだが、俺が大学生で映研なぞに所属し病んだ8ミリ映画を撮っていたころ。
そういうことをやってると、他大学の同好の病んだ人たちとも出会いがあるのだった。
そういう中に大阪G大の人たちがいたのだが、そこにあるときから1人の高校生が出入りしてると聞いた。
みんなは彼のことを「ナベシン」と呼んでいた。
俺は、まあ、酔狂なガキもおるんやなくらいにしか思わなかったのだが…。

それから、数年後、俺は就職し、当時は奈良に住んでいたのだが、1回だけナベシンと会ったことがある。
彼は当時、京都のみなみ会館という映画館でバイトしていた。
俺は、まだ映画作りとかに未練を残して悶々たる日々を過ごしていたように思う。
どういう経緯でそうなったのかは、今では思い出せないが、ナベシンが俺の撮った8ミリ映画を見たいと言ったみたいで、奈良から京都へフィルムと映写機を積んで俺は車を走らせた。
みなみ会館で通常の上映がひけて閉館したあと、そこのスクリーンで当時支配人をやってたMさんとナベシンは俺の映画を見てくれた。
そのあと居酒屋で3人で飲んだ。
何を話したかもさっぱり覚えていないが、今から思えばみんな20代だった。
先行きの一縷だか有り余るだかは知らぬが、多分夢みたいなことを語り合ったんじゃなかろうか。

あれから30数年、ナベシンは夢を忘れず、まあ兎にも角にも自作を映画館でかけやがった。
大した男だと思う。

シネヌーヴォの入り口が見えるとナベシンが立っていた。
白髪が目立つようになった彼は、相変わらず気取らない気さくさでは握手をしてきた。
握手なんて何十年ぶりにした気がするが、思いのこもった握手だった。

上映後の舞台挨拶
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