男の痰壺

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パラサイト 半地下の家族

★★★★★ 2019年12月28日(土) TOHOシネマズ梅田9

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【ネタバレです】

上映冒頭にポン・ジュノ自身の紹介映像が出て、これから見る人のために絶対ネタバラシしないでくださいとあった。そこまで拘るびっくり仰天のものではないが、大きく2度にわたってドライブする展開はなるほどの予想以上のものです。

 

貧乏一家が金持ち一家に身分を偽って取り入る。ちょっと「レッド・ファミリー」を思い出すような設定で、この前半は、まあありがちとも言え、1人また1人と家庭教師だ運転手だ家政婦だと芋づる方式で入り込むのだが、出来すぎ感もあって娯楽映画の便法にのっかったものの範囲に収まっている。しかし、ポン・ジュノ演出の相変わらずの被写体を捕らえるサイズのしびれるような的確が随所で利いてるし美術の圧倒的なすばらしさが凡百の類似映画は軽く凌駕しているんですが。

 

この映画には根っからの悪人は出てこない。

取り入る側にも取り入られる側にも真の悪意は不在で、特に金持ち一家の意外なまでの善い人ぶりは予想を大きく裏切る。

そこに新たな闖入者で大きく転がした上で、さらに水害でもう一転がししていくのだが、そういった大構えのネタ投入も又堂に入って唸る。

 

格差っていうものを表するに「匂い」っていうものをフィーチャーしている。一見露骨でいやらしい設定だが、超えられない壁をリアルに提示するには新しい仮借ない何かを発見することが必須だったのだろう。

今年前半の「バーニング」に於いても、この格差ってのが物語を起動させる震源になっていた。今、韓国で何が起こっているかを読み解くキーワードかもしれない。

 

出演者はみなすばらしいが、なかでも特に母親役のチャン・ヘジン。予測外の飛び蹴りには本当に参った。

 

類型化寸前の寄生劇を頭抜けた美術と撮影で乗り切って大きくドライブする展開。そして隠匿ドタバタの裏側から暗部が頭をもたげる。匂いの指摘が着火した導火線は止むに止まれぬ怒りを伴って明後日方向に爆裂した。大水害の避難所の一夜が全てを変えたのだ。(cinemascape)

 

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