男の痰壺

映画の感想中心です

蛇の道

★★★ 2024年6月16日(日) MOVIXあまがさき7

化けの皮が剥がれた、ってのは言い過ぎだろうか。物語は方便であって、黒沢清の言いたいことは、世界は思いもしない枠組みで成り立っているとか、終末の到来の蓋然性への遣る瀬無さとかであったはずで、今回そういうハッタリの虚飾を何故だか知らないが放逐してしまった後には抜け殻の方便だけが横たわっている。監禁ものとしては緩いだけだし、幼児の臓器売買ネタは言葉尻だけで現実から遊離したそれにリアルの欠片もない、

 

ダゲレオタイプの女」には確実にあったフランス映画を撮るという悦びも消失している。何故にオールフランス人キャストでなかったのか。日仏混合の出演者のコラボは文化的差異化を際立たせるだけで、まるで園子温の「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」みたいな益体の無さだ。ハートを欠いたコラボの形骸だけが無惨に露呈する。まあ、もともと黒沢清にはハートがないから仕方ないのか。

 

20世紀の終焉が近いあの頃、大阪は天六にあったホクテンザで年がら年中かかっていたVシネの中で黒沢と三池の映画だけが新しい時代へのとば口を開けてるように思えたものだが、そのままそこに置いておいた方が煌めきは持続したんじゃなかろか。

 

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