★★★ 2025年6月7日(土) シネヌーヴォ

作家の自死に至る数日間を描いてオリヴェイラ作品中最も厳格とされる作品。と聞いて俺は例えばルイ・マルの「鬼火」みたいなのかと思ったが、まあ、ああいう地味に見えてある意味絢爛たるテクを弄したキザなもんがオリヴェイラにでき得るわけもなく単調の誹りは免れない。
とは言っても、役者が普段着で出てきて俺が私が演じますみたいなメタ構造。なのだが、それやるんやったらカレル・ライス「フランス軍中尉の女」くらいに徹底的にやらんかいの付け焼き刃である。
絶望に苛まれる作家の心理を、お世辞にも克明に描いたとは言えぬなかで、オリヴェイラらしい歪な感度は同居している愛人に向けられていく。その他人事とでも言うような観察の視線。悪意や冷徹ではなく、事は起こっていないかのような不可侵の無謬性。それこそが絶望の日々だと言っているかのようだ。
絶望に苛まれる作家の心理をお世辞にも克明に描いたとは言えぬなかオリヴェイラらしい歪な感度は同居愛人に向けられていく。その他人事とでも言うような観察の視線。悪意や冷徹でなく事は起こっていないかのような不可侵の無謬性。それこそが絶望の日々。