★★★★ 2020年3月15日(日) プラネットスタジオプラス1
びっくりするくらいに、ド直球の不倫よろめきドラマで、80分の中尺にそれ以外の枝葉をつける余地もない。時代が変わっても男と女のすることに変わりはないってことですな。
本作の肝は、ジーン・ハーロウだ。
主人公ゲーブルをはさんで対峙する2人の女。人妻で賢婦人のメアリー・アスターと娼婦のハーロウ。よくあるパターンで、案の定ゲーブルは気のおけないハーロウを袖にしてアスターによろめく。
で、ハーロウは嫉妬にかられてみたいな展開になるかと思うとそうならない。彼女はことの成り行きを興味深げに見守るだけ。
冒頭、ゲーブルとハーロウの最初の互いの腹の探り合いが、言葉の裏の裏を互いが承知してるような絶妙な間合いで楽しい。
であるから、ド真面目女より、そっちの方が相性いいぜよと巧まざるとも思わせるのだ。
後年、ジョン・フォードが「モガンボ」として同じゲーブル主演でリメイクしたらしい。女優はエヴァ・ガードナーとグレース・ケリー。
この掴み所のないハーロウの役を硬質なエヴァがどう演じたのか興味深い。
簡潔で無駄がないがコクと余白もない80分の不倫ヨロメキ劇だが、分を弁え引きのスタンスで諦観するハーローの存在が糊代を広げる。冒頭ゲーブルとの腹の裏を探り合うような駆け引きが洒落ていて絶品。仏領インドシナの最果て感があれば尚良かった。(cinemascape)