男の痰壺

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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

★★★★ 2023年10月22日(日) MOVIXあまがさき11

「沈黙」以降、スコセッシの映画に何一つ新たな何かを期待してない俺だが、本作はよりによってディカプリオ&デ・ニーロの共演ってこと。それによって新味の欠片もないルーティーンの極みは逆目に転じて何某かが到来するのではとも思ったが何も到来しなかった。

でも、美術や衣装の分厚さも十二分で、時たまくる殺戮のスコセッシらしい日常性はやっぱり良く加点しました。

 

そもそもに何を描きたかったのかがバラけている、というか描かれるべき論点が多様すぎて絞りきれなかったきらいがある。その為に3時間超という上映時間になってしまった。

小悪党ディカプリオと大悪党デ・ニーロが上昇して転落する話とそれに際してディカプーが女房に毒盛るわけだが、そこを全くサラリと通してしまうので、あんた女房好きなんかどっちやねんであって、もっと激しく懊悩するとか逡巡するとかがないと、結局好っきゃーなかったんかいとなる。

この物語は最終盤の女房の台詞に全てが収斂するわけだから尚更なのだ。

 

アメリカの歴史上、富豪先住民が大挙して現れた史実や、FBIの誕生間もない頃の正義への確信。そういうのは費やした時間に見合う興味深さはあるんですけど。

 

ディカプーの心根が女房とデ・ニーロどっちに寄ってるのか曖昧なのが物語強度を阻害する。故に彼女の終盤の台詞に全てが収斂する体裁がトンチンカン。富豪先住民の大挙出現やFBI設立に纏わる正義への確信といった米近代史実の厚みと殺戮の日常性。(cinemascape)

 

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