男の痰壺

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リトル・ミス・サンシャイン

★★★★★ 2024年11月27日(水) TOHOシネマズ梅田5

何年か前に「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」を見て素晴らしかったので、ああこんなことやったらこの夫婦監督の「リトル・ミス・サンシャイン」も見とくんやったな、と思ってました。今回再映されてやっと見ました。

 

冒頭、6人の登場人物を点描したあとで、彼らが集結するんやけど、なんやろか、実にオーソドックスなカット繋ぎの快感とでも言いますか、的確なアングルのショットが連鎖する安定を見て、やっぱこの夫婦監督ええなと思った。

 

何かしらの問題や悩みを抱えた男たち。爺さんはコカイン中毒で施設から放逐され、父親は胡散臭い自己啓発プログラム売り込みで一攫千金を賭して負け、叔父はゲイの恋人に振られて自殺未遂、息子は引きこもりで空軍パイロットになる叶わぬ夢に縋っている。能天気な爺さん以外は深刻モード。一方で母は現実を見据えている。娘は幼いので悩みはない。

この一行が娘のミスコン大会の為に車で会場のある都市に向かうわけで、その途中で各人の悩みや足掻きに帳尻をつけさせられる。この世知辛い現実に対面して各自はもがき苦しむけど、そういうときに、普段はエロ話しかしないような爺さんが一言二言言うことで彼らは救われるわけだ。演じるアラン・アーキンも絶品であった。

 

ミスコンで娘が場違いなアトラクションを披露して会場ブーイングの気配を察知した家族たち。娘が妹が姪っ子がピンチ。そういうとき普段は斜に構えてる叔父や兄貴も含めて矢も盾もたまらず舞台に駆け上がり娘と一緒にバカになる。家族とはそういうもんだ。胸が熱くなった。

 

道中、パイロットの夢を断たれた息子は、深い絶望にやってられるかと同道を拒否する。母親が説得するが聞く耳をもたない。そんなとき妹がやって来て無言で体を預ける。瞬時にして息子は「行くよ」と納得する。兄妹の絆とか一切描かれていなかっただけに強烈なインパクトである。

 

家族なんて平時では諍いや或いは互いに無関心であっても、いざ危急の事態に巻き込まれると吸引力が働くもんですな。っていうかそうあってほしい。えっ、俺の家族?知らんわそんなん。

 

的確でオーソドックスなアングルのショットが連鎖する快感。道中で夫・叔父・息子は各人の根も葉もない生き様に帳尻をつけさせられる。そして縋るもの断ち切られ真っ裸になった彼らの前に娘の姪の妹のピンチが到来。矢も盾もたまらずアホになる。それが家族。

 

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