★★★ 2025年3月8日(土) プラネットプラスワン

住む者は歳をとらず、あくせくせず適度に働いて衣食住は事足りる。であるから犯罪なんておきようもない。といった理想郷があったとさ、なのだが、そもそもにそんなんが本当に理想郷なんやろか、人間の利己心や競争心がある限りそういう世界では飽き足らないんじゃないか。
まあ原作がベストセラーになり映画化された時代は戦乱が横溢し貧困と飢餓が珍しくもなかったわけで、そんなこと思うのは平和な時代と国に生きているからなんでしょう。
終盤に至るまでかなり退屈である。遭難しそこに連れて来られた面々は最初こそ猜疑し帰郷を望んでいるが、理想郷=シャングリラの居心地の良さに馴染んでくる。今の時代の目で見ると、そんな美味い話きっと裏があるに決まってる、ってなるんだが、フランク・キャプラの映画にそんな裏なんてありません。だから退屈。
【以下ネタバレです】
唯一猜疑心を持ち続けていた主人公の弟が脱出を決意し兄を説得する。そのときの長ーいロナルド・コールマンの逡巡の1ショットの異質感。そこからの怒涛の展開は雪崩を含めての雪山のロケ撮影が「八甲田山」並に苛烈。そして理想郷に一抹の疑念を抱いたコールマンの選択は誤りであったとわかる。シャングリラは彼の前から永遠に「失われて」しまった。その凄まじい喪失感と悔悟の念。
1人救出された彼の顛末がロンドンの友人たちによって語られるエピローグも説話的でいい。ラストは夢か現実か。余韻を残す締めくくりです。
今の時代、そもそもシャングリラの設定がそんなん理想郷ちゃうやんなのだ。だから退屈なのだが、弟に説得されたコールマンの長ーい逡巡の1ショットの異物感。そこからの怒涛の展開は雪山のロケ撮影も苛烈。そして来る喪失の詠嘆。エピローグも説話的。