男の痰壺

映画の感想中心です

ニューヨークの王様

★★★★ 2023年1月7日(土) シネリーブル梅田2

チャップリン赤狩りを逃れて欧州に亡命してお尻ペンペンとばかりに最後っ屁をかました作品らしい。今回見直して初めて腑に落ちました。子どもの頃、テレビ放映で見たときは全然面白くなくてちゃんと見てなかったんやと思います。

 

「独裁者」や「殺人狂時代」のような声高なメッセージでなく、あくまでギャグに塗しての非米活動委員会揶揄は緩いとは思うが映画としての据わりはいい。そこに「モダン・タイムス」を思わせる近未来的ニューヨークの意匠が被さる様は自身が主演も張った最終作として今見ると優れた総決算に思えるんです。

 

今回あらためて思ったのはチャップリンが芸として見せる「自身の笑い」で、はにかみ笑いではなくガハハといった哄笑の見事さです。コメディアンってのは自身が神妙にやってるのに間の抜けたことをするのが通例だが、彼は芸としての自身の笑いを盛んに見せる。俺ら観客もつられて爆笑してしまう。稀有な至芸だと思いました。

 

犯罪としての戦争を斬った『殺人狂時代』の大言壮語から反転して身の丈レベルで非米活動委員会を揶揄する。そこに近未来のマスメディアへの『モダン・タイムス』を彷彿とさせる意匠での風刺が加味され集大成の趣き。そしてチャップリンの哄笑芸の見事さ。(cinemascape)

 

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