男の痰壺

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ハッピーエンド

★★★★★ 2018年3月17日(土) シネリーブル梅4
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ミヒャエル・ハネケの最近の映画は刺激不足で、老いたなの感が強かった。
しかし、これは、嘗ての悪意全開の絶対性に加え年寄りの冷や水的な今風意匠を積極的に取り入れ、完全にモノにしたケチのつけようのない傑作だ。
まだ、3月なのだが、今年のベストはよっぽどのもんが出てこないと、これを超えるのは難しいだろう。
 
トランティニャン、ユペールという配役に、又かの感を覚えた。
のだが、トランティニャンは予想外に絶対悪を表現し、ユペールは予想外に悪意を表象しない。
多分、お手盛りの歴史的名優2人を巧妙に使い切った時点で映画は70%くらいは成功した。
 
に加えて新星ファンティーヌの無垢性の使い切り方が尋常ではない。
海水浴に行くシーンがあるが、あのときの彼女の深奥にゲスな悪意の存在を些かも見いだせない。
 
ハネケは彼女の悪魔性を取り立ててフィーチャーするわけでもない。
家族の寸景のひとつにすぎないのだ。
そこが、たまらなくクールだ。
この程度どうってことないでしょ…とでも言うように。
 
日常の中の不穏と崩壊の予兆とかではなく寧ろそういった中にしか日常は存在しない。ハネケの現状認識は今こそ聞くに値する。スマホ画像に映画に於いて初めて完璧な存在意義を付与。常連役者の逆説的使用。省略の適宜さ。打つ手全てが的中した稀代の傑作。(cinemascape)