男の痰壺

映画の感想中心です

プロフェッショナル

★★★ 1973年9月2日(日) 伊丹グリーン劇場
イメージ 1
敵味方同床の馴れ合い感が横溢する割にはその辺を過剰にフィーチャーせぬ醒めたブルックス演出が悪くはなく、2大曲者男汁役者が確執もなく共闘するのも又味わい深い。しかし、やっぱ強固な憎悪や義憤がないと盛り上がるようで盛り上がらないのだよな。 (cinemascape
 

荒野の七人

★★★★ 1973年9月2日(日) 伊丹グリーン劇場
イメージ 1
世界を取り巻く厚みは減失したが粛々と仕事を遂行するプロ魂は倍加され胡散臭いリーダーのもとでもミッション遂行のエネルギーは十全。7人と言うより4+3のキャラ力学が頃合の配分でド真ん中を射抜かれた少年の夢は主題曲に乗り今でもメキシコの空を翔る。cinemascape
 

二重生活

★★★★ 2023年11月23日(木) プラネットプラスワン

毎回、役を演じるときにその役が入りすぎて日常にも侵食してしまう。それが高じてとうとう殺っちゃいましたって話なんですが、どうなんでしょう。

そういう男だから、「オセロ」を演じる話が来たとき躊躇する。だってあれは、女房が浮気してるとあらぬ疑念に囚われてとうとう殺してしまう話ですから。

舞台で妻の役を演る女性は私生活での元妻で、よく事情を知ってるので怯えて、あわやのところを回避する。餌食になるのは、レストランの女給であり、そのへん「オセロ」との整合性はどうなんという感じだが、とにかくその役を演ったシェリー・ウィンタースが良い。彼女で加点しました。

 

元よりの変質者ではなく、役が入り込むことで異常を来してくるあたり、「ジキルとハイド」の変奏バージョンとも言えるかもしれない。

ロナルド・コールマンは本作で1947年のアカデミーとゴールデングローブの主演男優賞を獲得してますが、功労賞的側面もあったんじゃないでしょうか。

 

かなりに無理筋な設定に思えるのだがコクのある演出で引っ張る。素の好漢と役が憑依した魔、光の当たるスターと深夜の裏道を徘徊するショボくれ中年。2つの「二重生活」の後者に於けるシェリー・ウィンタースの冴えない場末感と哀しみが際立っている。

 

kenironkun.hatenablog.com

追悼 山田太一

山田太一が亡くなったことで又ひとつの時代の終焉を思うのだけど、そんな最もらしいこと言って実は「岸辺のアルバム」も「ふぞろいの林檎たち」も見てません。ただ唯一「男たちの旅路」は大好きで見てました。

 

街中のビルの「土曜ドラマ」の電光表示が静謐な夜の静寂に流れたあと、ゴダイゴのクールなテーマ曲が切り込んでくる鮮烈なイメージは今でも脳裏に焼きついてます。

 

毎回、ドラマのテーマはあるのだけど、戦中派で特攻生き残りの鶴田浩二と70年代のノンシャランな空気を発散しまくる水谷豊、桃井かおりの価値観の相剋が全篇を通じて基底にある。そこがたまらない魅力だったと思います。

山田太一もそのコラボレーションを見て第2クールから展開を膨らませていった節があります。つくづく当意即妙の練達を思わせる素晴らしさだった。

 

ご冥福をお祈りします。

湯を沸かすほどの熱い愛

★★★★ 2016年11月16日(水) 梅田ブルグ7シアタ-4
イメージ 1
如何にして人生にけじめとか帳尻をつける物語だろうと高を括っていたら中盤から思わぬ展開に襟を正すことになる。
全く報われない人生を送ってきたらしい彼女だが、その報われなかったことに気付こうとしないのではなく、報われる報われないという価値観さえ持たない。
おそらく、多くの辛さや苦しさを乗り越えてきたのであろうが、よくある自己憐憫に陥ることは皆無だ。
その経験をもとに他者に助言をするが、辛辣に強いることはない。
ただ、抱きしめる。
杉咲花も伊藤蒼も松坂桃李も抱きしめられる。(オダジョーは抱きしめられないのだが)
愛というより、もう少し崇高なものを感じた。
多くの伏線が巧く機能している。
「高足カニ」や「手話」や「勝負下着」など。形骸的でなく生々しいリアリズムを伴っている。
ただ、惜しむらくは葬儀や火葬でああするなら、彼女が「銭湯」に対してもっていた思いをもっと描いてこなければ成り立たない。やや強引。 
 
報われぬ人生に気付かぬのでなくそういう価値観を持たないのだ。辛苦を乗り越えてきても自己憐憫は皆無。彼女はただ他者を抱きしめる。愛よりもう少し崇高な感じ。ただ、葬儀でああするなら彼女の仕事に対しての思いを丁寧に描かぬと成り立たない。強引だ。(cinemascape)