★★★★ 2020年2月14日(金) 梅田ブルク7シアター5
意気は買うけど、さすがにポシャるやろと思っていた。
でも、予想外に健闘している。少なくとも俺は思います。
【以下ネタバレです】
もちろん、規模において、エメリッヒとかのハリウッド製終末ディザスター映画に比べることは叶わない。だってこれは、危機を回避して終末前夜で終わる話なんですから。
むしろ、SFパニック映画を撮りたいという入江の言に反して、これは上質のポリティカル・サスペンスとでも言うべきジャンルの成功作だと思う。
俺は、見ながら、トニー・スコットの佳作「エネミー・オブ・アメリカ」をずっと思い浮かべていた。あれも、徹底した逃走と追跡の映画だったが、本作も見事にそこに特化している。大状況のカタストロフィ描写は捨てて小状況に絞ったのがシュアだ。
捨てたと書いたが、それでも、中状況のカースタントやモブシーンといった日本映画があんまり巧くない部分も予想外にいい。この監督、作を重ねるごとに腕を上げてるのがわかります。
まあ、AIの暴走を制御するプログラムが簡単に出来ちゃうとか合点のいかない部分もないわけじゃないんだが、それでも、どこのどいつが何の為にって要が急所を突いてくる。
入江監督の前作「ギャングース」では格差と富の偏在をとりあげられていたが、今回は高齢化と少子化の人口構成による社会保障の破綻であって、ジャーナリスティックな問題意識は正鵠を射ている。
若手のあんまり知らない役者が主線を担っているが、そんな脇で三浦&アリスの刑事コンビが実にしっくり収まっているのもパランス感覚良いわ。
個人情報を一手に握られる危うさと社会保障が機能不全となる未来図がポリティカルに描き切れたかはともかく、全篇を逃走と追跡の攻防に費やし走り続ける作劇が良い。近未来のディテールが現在世界と混濁し三浦&アリスコンビが非情に人情を注入する。(cinemascape)