男の痰壺

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逃げ去る恋

★★★ 2022年7月11日(月) テアトル梅田2

アントワーヌ・ドワネルものの最終章だそうだが、トリュフォー自身は第4作「家庭」で帳尻をつけたつもりだったので、如何にもな蛇足感がある。大して面白くない。

 

多分、全篇の半分くらいが第1〜4作「大人は判ってくれない」二十歳の恋」「夜霧の恋人たち」「家庭」の場面で構成されており、言わば自身によるアンソロジーみたいなもんだ。このうち「二十歳の恋」は未見なので、その主演だったマリー=フランス・ピジェが現在パートで主たる役割を担うのも入りこめなかった要因かもしれない。

4作の変遷に感慨を抱くほどにはアントワーヌ・ドワネルもの好きでもないのだが、しかし、やはり「大人は判ってくれない」の少年期のレオにはある種の失われた輝ける時代への郷愁(レオ少年は決して幸せだったわけでもないのだが)が働き胸に迫るものがある。

それほど好きでもなかった映画だが、ちょっと見直してみたい気もおきました。

 

展開はどうでも良く4篇のドワネル編年記アンソロジーで、モラトリアムのままに途切れるそれに何の感慨もない。ただ『大人は判ってくれない』の未だ先行き見えない遣る瀬無さには別格の刹那は感じる。少年期に思う無限の未来はこうやって無為化されるのだ。(cinemascape)

 

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