男の痰壺

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私がやりました

★★★★ 2023年11月9日(木) 大阪ステーションシティシネマ

1人の女が邸宅を出て慌てて歩いて行く。この冒頭数分間の絶妙に安定したモンタージュだけでも、ああ、この映画見に来て良かったと思わせるものがあります。「熟達の域」なる言葉をどっかの評で見たけど言い過ぎではない。

オゾンのフィルモグラフィ上、女たちによるクライムコメディは2002年の「8人の女たち」があったけど、20年の時を経て今回、円熟味が加わった感があります。

 

まあ、お話としては頷ぜない部分もあります。彼女たちは一か八かのリスキーな選択をする割に、そこまで追い込まれた感がないのは物足りないし、選択後の展開もあまりに牽強付会です。でも、あくまでライトなコメディなのだから言うだけ野暮。1930年代を表象する美術や衣装の良さも相まって前半部分に関してはほぼ完璧と言っていい。

ただ、後段になってユペール登壇以降、若干予定調和な展開に落ちた感があります。そもそもにこの役ユペールでは絶対的なアイコンとしての存在感がやっぱ不足でして(大好きな女優ではあるんですが)、オゾンの系譜上の駒ではドヌーヴならとどうしても思わせる。

 

まあ、それにしても、今年の日本公開作が3本のつるべ打ちとなったオゾン。ずっと見てませんでしたけど今後しばらくは見たいと思わせる出来ではありました。

 

熟達の域に達したオゾンのカッティングリズムの誘う快楽が展開の牽強付会さや腑に落ちなさをふっとばし30年代の美術や衣装の良さも相まって前半は完璧。だが哀しいかなユペール登壇以降は予定調和に収縮していく。更なる破壊的な駒ならと思わせた。(cinemascape)

 

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