★★★ 2025年4月15日(火) MOVIXあまがさき3

法が裁けぬ・裁かぬ悪人を、そんなら俺が・俺らが代わってぶっ殺したるわーと、そういう題材は「黒い警察」とか「ダーティハリー2」とか70年代に何本か作られたし、そもそも「ダーティハリー1」や「フレンチ・コネクション」にしても、警察の内規なんて無視して力で悪を制圧するハミ出し刑事が主役だったわけで、それをヤンヤ喝采する民衆(オレ筆頭)は危険な保守反動の兆候だと尊敬する故・佐藤忠男先生はかつて仰っておりました。そんな裏目読みは牽強付会やと当時も今も思ってるんですが、ネットの民意が肥大化して一種のファシズムに走りかねない今、そうも言ってられない気がします。
そんな時代に10年ぶりに作られた「ベテラン」第2作であったが、どうもね、悪人殺しの側が一片の肩よせする気もおきないサイコパスではな、と思いました。
まあ、仕方ないですなー、これはあくまで家では女房の尻に敷かれ、職場では上司との関係に苦労しつつ、それでもなんやかんやで成果を挙げる庶民派刑事を、ドス黒いカルマを微塵も見せずにファン・ジョンミンが演じ切るのを楽しむ作品なんだから。その点では、まあ満足でした。
今回、ジョンミンの息子が酷い目にあう。学校ではイジメにあい、犯人には拉致られて人質にされる。それでも何とか事件が解決してのジョンミン宅。1人鍋で茹でたインスタントラーメンを台所で食うジョンミンのところに息子が来て座る。「お前も食うか」。息子は黙ってそのラーメンを食う。
女房とたまたま家にいた次男の3人で見に行った。見終わったあと飯を食いながらそのシーンについて息子が言った。「あれだけ?」
言外に他にかけてやる言葉ないんかいとの詰りが窺えた。
「仕方ないやん、酷い目にあった息子にはラーメン食えとしか言えんもんや、親として、そんなもんやて」と思ったが口に出しては言わなかった。
「それにしても不味そなラーメンやったな」
横から割り込んだ女房が見当違いにそう言ったが、めっちゃ美味そと思った俺は、やはりそのことは言わなかった。
人生とは表面づらばかり見てても仕方ないのだから。
「必殺仕事人」とか「影の警察」とか胸のすく成敗とイリーガルであることの已むに已まれぬ鬩ぎ合いが肝なのに根っからのサイコパスではなと思うが、まあこれは、庶民派刑事をドス黒いカルマを微塵も見せずにファン・ジョンミンが演じ切るのを楽しむ作品。