★★★★ 2024年11月27日(水) 大阪ステーションシティシネマ7
制作に携わってるアリ・アスターの亜流系譜かと思ったら予想外にミシェル・ゴンドリーのテイストだった、みたいな。
天国から地獄という単線構図だが、奥床しいのは、ニコラス・ケイジに転がり込んだ天国をラッキーと双手で喜ぶ風情が全くなく戸惑うばかりで、結局大して美味しい思いもせずに地獄へ真っ逆さま。
天国状態でも何一つえーことなかったってのは、「スプライト」からのCM話を持って来た胡散臭い企画会社の女の子から猛アタックされる件が白眉であろうか。面白みのない実直人生を送ってきた教授だから当然に女遊びの経験も大してなく、彼女にすり寄られてズボンのファスナーに手をかけられただけでイッてしまう。しかも恥の上塗りの如く屁を1発2発とこいてまうのだ。身につまされた俺は思わずガハハと笑ってしまったが、例によって映画館の中で笑ってるのは俺1人であった。
人生いいときも悪いときもある。総和としてそれがプラスであったかマイナスであったか、なんて終わってみなけりゃわかんないし、そもそもにそれって人それぞれの感じ方次第なのだ、みたいな達観を感じ取れる映画だ。
夢が題材の映画なので、様々な奇天烈イメージを奔放に繰り広げることもできたろうが、そこまで妙ちきりんなものもそれ程なかった。その点にも好感を持った。ここぞとばかりに、そっちに注力しまくるのも違うと思うから。
妻役のジュリアン:・ニコルソンがいい。彼女が若いときに言った「トーキング・ヘッズ」の衣装でデートに来て、を健気に実践するニコラス・ケイジにも泣けた。
夢を題材にしてるが過度な奇矯を抑え世知辛い現実世界への反映に重きを置いてる。清涼飲料とのタイアップ企画の件が佳境で即漏れ屁こきの悲哀は身に沁みる。人生良いときも悪いときもある。総和としてのプラマイは終わってみないと判らないという切ない達観。(cinemascape)