男の痰壺

映画の感想中心です

終わりの鳥

★★★★ 2025年4月14日(月) テアトル梅田3

でっかいインコが死を告げにくる、ふーんってなもんで殊更見たくもなかったんですが、空いた時間にハマるのがこれしかなかったので見た。だが見て良かったと思った。

 

【以下ネタバレです】

病で余命幾許もない女の子がいる。その彼女のもとにインコがやって来た。女の子は必死でインコの気を逸らそうとするのだけど、このインコ結構、話を聞く耳ってのを持っていて何やかんやと死なすのを延ばす。このやり取りが、インコの造形の感情の知れなさと、でっかすぎて不気味でもインコだから時に可愛いという絶妙の匙加減も相まり飽きない。

 

だが、この映画、そんなキッチュでポップなキモ可愛いさや恐怖と笑いのアンビバレントな食い合わせを目指しただけのものではない。

監督はクロアチア出身の女性監督ダイナ・O・プスィッチ、40歳の長篇デビュー作なのだそう。女性らしい視点で女の子と母親の関係性を描くそれは意外にもドライで情緒を排してるのだが、にもかかわらず優しい。

 

どうせ、インコが情に絆されて女の子死なすのやめるんやろみたいな結末にはならないところに驚いたし、限りなく納得した。母親も娘を助けて下さいなんて言わないし、娘もジタバタせず従容と死を覚悟している。ただひとつだけ、どうかやすらかに逝かせてやって下さい。

愛する娘に手向ける願いの「本物」さにささやかに心打たれる。

 

巨大インコの造形の感情の知れなさと、でっかすぎて不気味でもインコだから時に可愛いという絶妙の匙加減も相まり飽きないのだが、その不気味可愛さに頼らない真摯な母娘の物語に絆される。ドライで脱情緒的だが従容とした覚悟を見守る視線は限りなく優しい。

 

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