男の痰壺

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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

★★★★★ 2018年5月12日(土) 梅田ブルク7シアター5
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何十年も映画を見続けていると、いわゆる天才子役ってのに食傷気味である。
だから、ブルックリン・キンバリー・プリンスって長ったらしい名前の女の子も、もちろん巧いし可愛い。
のだが、だから?…ってな感じなのだ。
 
この映画の肝は、母親役ブリア・ヴィネイト。
リトアニア出身、米国在住、21歳。まったくの新人。
それと、ウィレム・デフォーである。
 
2人の演った役は、表面上、おためごかしの善意とは無縁。
だが、心根では、自分の娘を、或いはシステムから落ちこぼれた弱者を激しく思いやる。
デフォーが巧いのは当然だが、ヴィネイトの怠惰ではすっぱな風情だが、間違いなく娘を愛している。
そういう確信に近い説得性を導きだされて答えているのが驚きだ。
 
これは、社会システムの暴走した歪が多くの弱者を産み出し蹂躙する。
そういう問題点を明らかにできた点に於いて、昨年の「わたしは、ダニエル・ブレイク」に拮抗する。
 
ごく普通のテーマパークの風景が、これほどの衝撃を産み出す。
それほどまでに我々は、この置き去りにされた世界に没入していたということだ。
 
錬金システムの暴走が産み出した格差をどうこう言う意図など映画は更々ない。怠惰だが子供どもへの愛はある。功利主義に追従するが弱者への思いやりは忘れてない。そういう人間の感情起源への希望。だがメルヘンチックな飛翔は怜悧な現実の前で奈落に落ちる。(cinemascape)