★★★★ 2025年11月15日(土) Tジョイ梅田7

予告篇見てて、佐藤二朗の例によってのクセありまくり演技もーゲップ出るわ、と見る気もなかったが、見てみると、ちょっと気合いの入り方が予想の上を行っていた。佐藤二朗これで賞取れなければ一生取れんやろ思わせる。
トリックスターの犯人と取り調べで対峙する。もう「羊たちの沈黙」以来何度も色んな映画が試みた設定で、正直ちょっとやそっとでは見るものは驚かない。本作では取り調べ者を、染谷→渡部→山田と入れ替わらせる。染谷が露払いで山田が真打だが、役者の力量から言って順番逆に思えるけど、それをこうしたことで映画の厚みが増している。染谷が何かやるんじゃないかの予断。一方で渡部の久々に見た本腰入れた演技も特筆であった。
【以下ネタバレです】
爆弾をめぐる取り調べと並行して2つの事案が描かれる。伊藤沙莉・坂東龍汰の巡査ペアの聞き込み捜査、染谷の先輩刑事・加藤雅也の起こしたスキャンダルの関連捜査で、これが本チャンの事件と絡む経緯もあざとさがない。展開の手際がいいんだろう。
すずきたごさくと名乗る男は何者なのか?は、動機も含めて7、8割が明かされる。これが全解明に至らないのは抑制したと思うが、それでも社会的弱者に追い込まれた者のルサンチマン的な解は尚日本的な情に濡れている。このへん「羊たちの沈黙」や「セブン」の汎時代性に比べて弱いと思うのだ。まあ、それでも力作だと思う。