男の痰壺

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密偵

★★★ 2017年11月23日(木) シネリーブル梅田2
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敵に与する男と、敵に抗する男の確執。
やがて生ずる友情とシンパシー。
といったノワールな骨子は良い。
のだが、どうも一直線に行かない。
 
互いが腹に一物の飲み明かしでベロ酔いになったふりで、別れた途端シラフになる。
初戦としては定石だが王道。
だが、その後、ガンホが、どう感情の方向を転換していくのか契機がない。
ので、済し崩しに敵側に与していく感がする。
 
あと、義烈団の壊滅後、メンバーのハン・ジミンがクローズアップされる。
しかし、それまで2人の男と彼女の関係性は希薄なので、いかにもな取ってつけた感がある。
 
キム・ジウンの演出はポイントを押さえてキレがある。
特に導入と列車の長いのシークェンスは素晴らしい出来。
列車の顛末のあと、草原を遁走していくガンホのロングショットは印象に残る。
 
腹探り合いの一夜を発端とする王道展開かと思えば、敵に与する男の心情の揺れはクローズアップされず済し崩しに状況に流されてゆく。強固なエモーション欠落下で感情の寄せ処がない。ただ、演出は随所でキレがある。特に冒頭の急襲と中盤の列車シークェンス。(cinemascape)