男の痰壺

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殺さない彼と死なない彼女

★★★★★ 2019年11月27日(水) 梅田ブルク7シアター5

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女子向け映画が隆盛を極めている感があって、正直、食指動くわけないし、おじさんが1人で見に行くってのは敷居が高いんですが、それでも映画を見るにジャンル横断主義を掲げる俺やないかと自らを鼓舞して行きました。

 

これは、良作だと思いました。

序盤、なんだか岩井俊二的な長焦点レンズのフォーカスが続くんですが、それが手持ちらしいのにバッチリ焦点が合ってるのに居住まいを正した。

 

「殺すぞ」・「死ね」を連発する男と「死にたい」・「死ぬ」を繰り返す女の子の話っていうと、聞くだにうんざりするのだが、けっこう野郎が根はいいやつみたいだし、女の子も自我を喪失した閉塞世界の住人ではない。

男と女の相性ってのは、余人が計り知れない2人っきりの何かが作用するので、この2人が「殺す」・「死ぬ」を連発しながらも腐れ縁のようにつるんで別れないのがよーくわかるんですなあ。

やがて2人は、お互いを代替不能なパートナーとして認識する。

 

映画は、この2人の話と並行して、ヤリマン女とその幼馴染の女子、一方的な想いをクラスメートの男子に告り続ける女子の話が交互に描かれる。

それらが、微妙に連関するのが「桐島」っぽい感じだと思っていたら、大きな仕掛けが待っていた。鮮やかという他ないし一気にもっていかれる感じだった。

 

監督は小林啓一。TV畑出身で映画的キャリアはそれほど多くないみたいだが、覚えておくべき名前だと思う。

 

殺す死ぬを繰り返しつつ殺せない死ねない2人の内的宇宙に迫ったとは言えないが、それでも互いを希求する空気の醸成がハンパないので凄まじい至福感だ。並行する2挿話は可もなく不可もないレベルだが連関し急転する終盤の畳み掛けで巧緻な配置が明かされる。(cinemascape)

 

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