男の痰壺

映画の感想中心です

兆兆乱れ飛ぶ札束の先

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年収500万で貯蓄100万の世帯の大黒柱のお父っつあんが癌だってんで1000万かかるという。眩暈がしそうな額だけど、女房は借りれるとこから搔き集めて工面した。

手術は成功したが、後遺症が残ったお父っつあんの収入は300万になった。一家は生活を切り詰めるだけ切り詰めて返済していたが、残債は消える当てもなかった。数年後、あばら家となった一家の住んでいた家を木枯らしが吹き抜ける。彼らがどこに散りどうなったかは誰も知らない。

 

世を挙げての「補償」の大合唱に手前の金じゃないから言ってるんだろうが怖ささえ覚える。先の一家は1000万の手術でなく存命率ゼロの100万の投薬治療も選択できた。

お父っつあんは一家の先行きを考えて涙にくれる妻を説得した。大黒柱は失ったが妻はパートに出て子供たちを立派に育てた。成長した子供たちは母親を助けバイトしながら進学して就職した。

数年後、夜中に目が覚めた妻は亭主の遺影に向かって言うだろう。

「お父さん、あのときはごめんね。苦しかったでしょうね。でも、子供たちは皆ちゃんと学校出て就職できたよ。ありがとうね」

 

今、お父っつあんの立場に誰がいるんでしょうか。

全員が幸せになることができないなら、未来につなげられる選択をしないといけない。