男の痰壺

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青春ジャック 止められるか、俺たちを2

★★★★ 2024年3月15日(金) シネリーブル梅田4

帰京する若松孝ニを追って新幹線に飛び乗った井上淳一が弟子にしてくれと言うとき、「水のないプール」見ましたし「俺は手を汚す」読みましたと言う。あゝこれは全く俺と同時代に同じ映画を見て同じ本を読んだ奴の話なんだと思いました。

 

止められるか、俺たちを」の前作は未見ですが、脚本書いてる井上が自身のことを描いて監督もやったことで、まあ、言わば最後の手を出したんやなあと思わせる。「祭りの準備」の中で脚本家志望の江藤潤が「新藤いう偉い先生が誰でも1本は傑作が書ける言うちょる、それは自身のことを書くことばい」と言ってましたが、そういう意味で、これは井上淳一の「祭りの準備」なんだろう。

 

 

正直、本作の中で決定的な何かが起こることはない。名古屋での映画館経営が若松にとってどれほどの熱量配分で為されたのか知らないし、井上の顛末にしても大手塾のPR映画撮りましたくらいではスゲーとはならない。ただ、あの80年代の空気の中で何かが変わる、何かをやれると遮二無二なって脇目も振らずに七転八倒した彼奴とあの子とあの人たちとの話で、ああ、俺も関西の片隅で同じような空気吸ってたよなと思うわけです。

 

正直映画の中で決定的な何かが起こる訳でもない。寧ろショボい話と言える。だが、あの80年代の空気の中で何かが変わる何かをやれると遮二無二なって脇目も振らず七転八倒した彼奴とあの子とあの人たちとの話で井上の極私的心情に深く同期する俺がいる。(cinemascape)

 

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