男の痰壺

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ミッシング

★★★★ 2024年5月19日(日) MOVIXあまがさき5

【ネタバレです】

 

「なんでもないようなことが幸せだったと思う」と愛娘の失踪から1年目のテレビのインタビューで母親が言う。見るものも「えっ?」とと戸惑う傍からカメラマンがバツ悪そうにカメラを止めて「それ、虎舞竜」と。おいおいこの場違いなギャグもどき一体どうやってケツふくんやーの微妙な間から石原さとみの号泣。平素なら笑うシチュエーションだからこそ平素ではない自分たちの状況が骨身に沁みる。俺はこういう際どい設定を思いついて、それをモノにできる吉田恵輔を本当に尊敬するし、石原さとみも完璧に応え切っている。

 

「声にならない嗚咽」文字で書けばそうなんだが、娘が保護されたとの警察からの電話に歓喜して向かった彼女がイタ電と知ったときのリアクションは落胆と怒りとそれ以上の倍加された哀しみが見たことないレベルで複層的に表現されてて心砕かれる。おそらくまだ小さい子を子育て中の石原の入れ込みは半端ない。

 

本作は子どもを拐われたとしか考えようがない状況で失った家族の葛藤と同時に、マスメディアは如何にしてその家族と向き合うかを問おうとしてるのだが、正直その部分が吉田啓輔にしては凡庸。ネット上で飛び交う無責任な言説も軽く描かれるけど、テレビ絡みもその程度の扱いでよかった。所詮は当の家族の思いと同地平にはマスメディアは立つことは出来ないのだから。

 

母親には自閉症ぎみな弟がいる。この男が少女の失踪直前まで一緒にいたってことで、マスメディアの標的になる。コミュニケーション力の不足と苛立ちが相乗してますます自閉的になり孤絶していく。そんな彼が映画の終盤、姉との2人きりの車中で堰き止められていた想いが溢れ出し咽び泣くシーンは本篇の佳境です。

モレッテイの「息子の部屋」じゃないが、そういった少女への思いを強く持つものたちだけで構成された物語を見たかった。

 

姉と弟がその時何してたかをメディアやネットは問うわけだが、当事者にとりそんな脇筋の話なぞどうでもよく、でも解決に繋がればの縋る思いから関与してる。だがそれが時に牙を剥き切り刻んでくる。さとみの号嗚も優作の咽泣もその現実を代弁してる。(cinemascape)

 

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