男の痰壺

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弱虫ペダル

★★★★ 020年8月21日(金) 梅田ブルク7シアター4

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全篇の2/3くらいをロードレースのシーンに費やしている。ほとんどのシーンで被写体が走り続けるわけだから、いやが応にも画面は躍動し続ける。これはシュアな選択だったと思う。

アニオタ道がスッパリ削ぎ落とされ、潜在的な自転車走への渇望が一瞬にしてとって変わる様は些か絵空事めいてるが、物語の希求するロジックに徹して正直で気持ちいい。

 

まあ、何分間も足止めくって、最後尾から延々全力疾走で先頭に追いつくってのが2回あるのだが、んなアホな正直無理っしょでありますが、これが少年漫画なんだわさと納得したのであった。

 

2ヶ所、いくらなんでも削ぎ落としすぎではと思った。

ママチャリしか乗ってなかった主人公が初めてロードレーサーに乗ったときのリアクションがない。なんだこれは!すげーうぉー的な。

後半のレースで最後尾の主人公が消える。転倒事故に巻き込まれたのだが、その瞬間は一切ないし、不穏な予兆みたいなのもゼロ。

常道では、当然あってしかるべきシーンだと思うが、撮ったけど切ったのか、最初からプロットになかったのか知りませんが、尺の関係にせよ、流れ重視にせよ相当に勇気がいる判断と思いました。結果、いい意味で歪な力業を感じさせる。

 

1年生と2年生の関係と距離感。その各々の配役なども良いと思いました。

それにしても、橋本環奈ちゃんは、あっちこっちようでてますなあ。主役、脇役、2の線、3の線となんでも来いの横断性は確実に何かを彼女の内実に積み上げてる気がします。今回もさして見せ場もない紅一点だが、不思議と存在感は刻印しています。

 

3度にわたるレースに構成を集約させたのが効き削ぎ落とされた強度を獲得。主人公の内面はワンイシューのモノローグ反復で片付ける。リアクションや起因を欠くプロットも歪。しかし全篇で画面を駆け抜け続ける疾走が一定のベクトルを付与するのは気持ちいい。(cinemascape)

 

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