★★★★ 2020年9月7日(月) 梅田ブルク7シアター7
継母とオヤジの間に子どもができたってことで、実の子でない私は…っていう女子高生の悶々。悩んだり反抗したりの定番ドラマと近所のお兄さんへの憧憬。
まあ、見たい気力は起こりません。
そこに、ホームレスの婆さんがからむ。
予告篇で見た桃井かおりの老け役には、全く食指が動かなかったのだが、悪くなかった。
悩める女子高生にあれこれ諭したり助言したりするわけだが、役者人生と浮世のあれこれ経験してきた先生のかおり節は到達形ともいうべき説得力を獲得していると思った。
この婆さんが、リアルな実存かファンタジーかの境目を映画はボカしたまま進行する。
それが、最後にストーンと落ちてズドンとくるあたり、巧みな脚本だと思った。
演出も瞠目に値する。ショット毎に気合いを感じさせ、得てして展開に流されてるだけの映画とは一線を画してると思った。「新聞記者」は題材的にイラつきそうなのでスルーしたが、この演出力なら見てみたかったと思わせた。
主演の清原果耶だが、親の前では感情を抑え、憧れのお兄さんの前ではカマトトなのだが、同級生の元彼にはタメ口のガン無視と女の多面性を表出する。末恐ろしい。
近所のお兄さんが伊藤健太郎。最近見る映画にどれもこいつが出てきて又かと思わせたが、確かにリアクションひとつとっても巧いと思います。
家族のことや異性への憧憬といった思春期の悶々を看破し助言・指南する女ホームレスかおりの歳経た重みも半端ないが、彼女もまた救われたいのだ。この双方向な関係が救うことで救われるのテーゼを示現して気持ちいい。演出・カメラともにハイレベルだ。(cinemascape)