★★★★★ 2022年10月11日(火) TOHOシネマズ梅田8
死んだ友への想いが物語を牽引するという点で、一昨年の「佐々木、イン、マイマイン」裏返し女性バージョンと言えるかもしれない。生きてるときは、時にムカついたりもしたけど、もう2度とそいつに会うことが出来ないという現実はそいつへの想いを心の片隅に熾りのように灯し続ける。
これは、その想いを大事にしつつ、でもそんな忸怩たる気持ちに囚われたままでは女一匹生きていけないとふっ切れるまでを描いた映画。
そうなんか?ちゃうかもしれませんが。
主人公は何かの営業の仕事をしてるのだが、何を売ってるのか皆目わからない。けど、事務所の雰囲気や上司見てれば相当に胡散臭いものだとはわかる。世の中には胡散臭い仕事は山ほどあるけど、日本映画で描かれるのは小ぎれいなオフィスでコンサル系とかIT系か、でなければ半グレの脱法仕事で、こういうスレスレ分野で一応はまともに必死に営業するような仕事は描かれない。現実はそういう仕事してる奴が多いんです。タナダユキが改めて信頼できる監督だと俺はこんなところで思ってしまう。
若い女1人で、鄙びた中華屋でラーメンすする。或いは田舎の居酒屋でチューハイガブ飲みする。よくある私やさぐれてるんです的な表面ヅラのポーズではなく、主人公の内面の蠢く葛藤や前へ進もうとする推進力の顕れとしてそれらは描かれているように見えました。
幼馴染のマリコとの記憶がカットバックされる構成だが、家庭内虐待を受け続け、最後には自壊してしまう彼女に主人公シイちゃんは心の中で寄り添い続けた。でも結果見殺しにしたやんとも言えるが、それ以上のことなんてできるわけないんです、現実は。
永野芽郁ちゃんを初めてみたのは2015年の「俺物語!!」で、なんて可愛い性格のええ子やあ!とファンになってしまった俺であったが、その後あんまりこれって役に恵まれてなかった気がします。あれから7年、今回の彼女を見て随分と廻り道して遠いとこまで来てくれたなと思いました。素晴らしかったです。
ヘヴィスモークやシケた中華屋のラーメンや居酒屋での1人酒などがヤサグレてんです私的な自己顕示でなく内実を伴う必然に見える。それは彼女の「生」への本能的希求が十全に描かれるからで、マリコを悼む、救えなかった自分を苛むからではない。真女性映画。(cinemascape)