男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2011年2月25日 (金))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

ドッペルゲンガー

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ここ数日、風邪ひいたみたいで、若干もうろうとしており、そんなときに現し身が異界へと誘われるのだろうか。さまざまな想念が俺をとらえるのだ。

先日、ちょっと頼みごとがあって10数年会っていなかった学生時代の映研の先輩に会った。喫茶店でしばらく映画の話なぞをしたあと
「俺なあ、以前、お前見かけてん」
「どこでっすか」
「阪急梅田駅の下の紀伊国屋の北側に長距離バスの乗り場があるやろ」
「ええ」
「ちょうどな、映画の撮影で鳥取行くのにバス乗ったらさ、お前が嫁さんと子供つれてバス待っとるの見てん」
「はあ?」
「あれ、お前やろ」
「ちゃいますよ…って言うか、先輩、俺の嫁はんや子供と会ったことないですやん」
「うん…でも、あれ、絶対お前やった」
「人違いですって、長距離バスなんか乗ったこと1回もないですし…って言うか、そんなことより先輩、あの映画の現場ずっと行ってはったんですか…」
と話は映画のロケ話に転じ、しかも、俺は頼みごとを切り出すタイミングばかり考えていたりで、そんな話は忘れていたが…。

 

ここ、数日、俺の頭に先輩が見たという「俺」の姿が去来する。
女房とまだ幼い子を連れて長距離バスの乗り場に立ち尽くす俺。
何か死出の旅にでも赴きそうな哀しさにまみれ
貧しさに負けたという昭和枯れすすき的くすぶり感をまとい、それでも、家族3人一緒なら…という逆説的に孤絶感いや増す設定。
もしも、そいつらを見たのが俺自身だったら…。
誘われ一緒に黄泉の国へ向かうのであろうか。
決して会いたくない連中だ。
でも、いつの日か、俺の形跡が消えたと思ったら思って下さい。
「とうとう会いやがったな、あいつ…ドッペルゲンガーに」
ふっふっふ…。